家族がいて、仲間がいて、心休まる故郷。
でも、弱い自分はそんな故郷に甘えてしまいそうな気がして
家出同然で実家を飛び出して、日本や海外をウロウロして、
自分を試すつもりで一文ナシで飛び込んだ東京のイベント業界。





会社に借金をして部屋を借りて、ガムシャラに働いた。
給料日前はいつも食うメシもなかったけど、華やかなその業界で働く毎日は、
全てが真新しくて ただひたすら楽しかった。

せっかく一浪までして入った芸大なのに、授業に出ないで好きな事ばっかりやって、
知識も技術も中途半端だったけど、それでもイベント業界では、
その少ない(ホントに少ない)知識と技術が「Origin」となって、
そして3年も経つ頃には「自信」となった。

そして。
少しずつ見えてきた「本当にやりたい事」。

ミスをしても護ってくれる会社組織。
そのかわり会社の決定・命令は絶対。

少しガマンすれば、毎月お給料は口座に振り込まれ、
それなりの仕事ができて、それなりの経験ができて。

また、弱い自分がそんな毎日に甘えてしまいそうな気がして

会社を飛び出て ひとりになって、
受ける仕事=自分の作品 になった。
ミスしても誰も護ってくれない。責任重大。

会社を辞めてすぐ、学生の頃によく聴いた「B'z」のツアーに関わる事になった。
「今夜月の見える丘に」を歌う稲葉さんと、ギターを弾く松本さんが立つステージの背景に、ドデカイ満月の夜空を映像で映し出す…
その景色を創らせてもらえる事になった。

手をつないだら 行ってみよう
燃えるような月の輝く丘に

自分も好きなその曲とともに、燃えるような大きな満月が昇る。

40以上ものレイヤーを重ね、
エフェクトを駆使し、
演出家にダメ出しされまくりながら、
1ヶ月もの時間をかけて創り上げたたったひとつの満月。
その満月が、たった数秒だけど、素晴らしい音楽と共に
2万人の人の瞳に映る。

もちろん主役はB'zのふたりであり、音楽そのものである。
純粋に音楽への感動であり、
また特別な想いが理由であるかもしれない、
と思うのだけれど、
それでも、自分が携わったその曲に、その瞬間に、
人の心を動かせる力があるんだ
と思ったと時、

「ずっとそんな作品を創り続けたい」

と心から思えた。

「人の心の琴線を振るわせるモノを創る」
それを仕事として出来るというシンプルな幸せを感じられた
素晴らしい瞬間でもあった。

相手は2万人じゃなく ひとり。
その想いはB'zのふたりも、ツアーに携わる我々スタッフも同じ。

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会社を辞めて5年後。

東京に来たばかりの時にお世話になった人たちと3人で食事に行った。
ひとりは僕が辞めた会社で今も総務をやってる人 Aさん。
ひとりは先日、その会社を辞めた人 Bさん。
僕も含め、その会社の「昔」を知ってるメンバーで久しぶりに
会おうという事になった。

誘う理由はなんでもよかった。
少し照れくさいので、引っ越ししたてのAさんには引っ越し祝い、
会社を辞めたBさんには門出祝いとして、
僕が食事をごちそうします と呼び出した。

銀座のとある隠れ家的鉄板焼き屋さん。
昔話に花が咲く。

僕にとっても特別な店なので、よっぽど特別な時、特別な相手じゃないと
連れて行かない。 ヤラシイ話、もちろんそれなりのお値段。
(だからそんなにしょちゅう行けるハズもない。すげぇ高いの…汗)
でも、だからこそ、
一文ナシで関西から出て来た、遊ぶ友達もひとりもいない小僧を毎夜毎夜
呑みに連れ出してくれて、酒の弱い僕を酔いツブし、それでも給料日前には
ゴハンを食べさせてくれて、淋しい時間を一緒にいてくれた先輩に
恩返しがしたかった。

「あの若かったキミが、独り立ちして、会社も創って、そして私たちにこんなゴハンをごちそうしてくれるようになったんだね…。会社辞めて、自分の夢追いかけて本当によかったね。」


不意に涙が出た。


ガムシャラに前に前に走ってきて、
「好きな事やってるから楽しいよ」と平気な顔してきたけど、

一瞬

ほんの一瞬だけ 心が緩んだ。


「ありがとう」を言いたいのは僕なんです。
迷いながら 悩みながら それでも前に進まなきゃいけない時に
あなたたちがいてくれたから今の僕がいるんです。
本当に 本当に ありがとう。


もちろん何かを成し遂げたワケでもなくて、
まだまだ相変わらず小僧のまんまで、
基本的に過去を振り返る人が大嫌いで、

でも、たまに昔を懐かしむのも悪くないな、と思った。

その辞めた会社とも今は良いお付き合いをさせて頂いていて、
よく一緒に仕事をします。
“現場”を「素晴らしい作品」にする仲間として。

そんな素敵な会社に入れてくれて、追い出してくれた仲間。
今の僕と必要としてくれて、一緒に仕事をしてくれる仲間。
酒に呑まれてバカ騒ぎして、朝まで付き合ってくれる仲間。
その仲間たちに出会えたこの東京に送り出してくれた仲間。
こんなに遠く離れていても僕を仲間だと思ってくれる仲間。
そして 家族。

別になんの記念日でもないけれど、何もない日だからこそ、
素直にその大切な人たちに感謝したい。

ありがとう。




今、世の中は混沌としていて、社会は暗さをさらに増し、
少し前の僕と同じように、悩んで、迷って(あるいは仕方なく)会社を辞めて、
それでも前に進もうとしている人がたくさんいると思います。

辞めた自分が正しいのか、次に選んだ場所が間違ってるのか、
誰に話しても、どんなに悩んでも、確かな答えなんてない。

「間違いない」と確信して前に進む強い人なんていない。
でも「間違いなかった」と後でちゃんと思い返せる瞬間がきっと来ると思う。

迷いながら 悩みながら 前へと歩みを進める方へ。
人間 迷わなくなったら終わり。
悩まなくなったらもうイイモノは創れない。
今は見えなくても 絶対にあなたは間違っていない。

しんどかったら弱音を吐いたってかまわない。

でも。
自分のいちばん奥に持ってる根っこの部分だけは疑わないで。

そして、あなたの背中をバッチリ護ってくれている家族や仲間への感謝は忘れないで。
(その人たちには毎日感謝したってかまわない。)

いつか自分の納得できるような瞬間にたどり着いた時に
その自分を支えてくれた家族や仲間に

「ありがとう」を言えたらいいですね。
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by wamhouse | 2009-01-24 02:06 | 想 : column

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