「おまえは“いっちょかみ”やなぁ」

中学時代、僕に器械体操を教えてくれた大恩師:故 片山太一先生は
渋い顔してよく僕にこう言いました。

“いっちょかみ”

キレイな言い方をすれば
どんな出来事でも興味を持ち、好奇心旺盛な人の事
つまり(悪い言い方をすれば)
何でもとりあえずやってみる、広くて浅〜い人の事

関西の方言ですが、あまり良い意味では使われませんでしたし、
事実、言われると少し心がクサクサしたものでした。

芸大で4年間映像を教えてくれていた担当教授にも
大学卒業の時に同じような事を言われました。

「まぁでも同じいっちょかみでも“一流のいっちょかみ”になってみるって手もあるね」

芸大に入り、映像の専門家として社会に出なきゃいけないハズのタイミングで
このまま映像業界で映像を創る事だけしかできない、なんてのも違う気がして
(もっと見聞を広めたいという意味で)就職活動すらしなかった僕に、
半ばお手上げ状態だった先生がくださった、残念な生徒への皮肉たっぷりの
ありがた〜い手向けの言葉だったワケですが(苦笑)

意外にも中村君→ココに食いついた。

物事を中途半端に修めようと首を突っ込むのが=いっちょかみ(悪口)。
じゃあ中途半端に修めず、全部ちゃんとやっていけばええんちゃうの?

ではその“全部”を“ちゃんとやる”というのは
一体“どのくらいの範囲まで”“どの程度深く関わる”事なのか?


社会の中で、映像やデザインなどのクリエイティブワークなんて
大きなプロジェクトの中のほんの一部。
それなら、まず僕はその大きなプロジェクト全体を俯瞰で観て(=範囲の理解)
その上で、クリエイティブの立ち位置と役割をちゃんと知った上で
「全体が理解できているクリエイターになろう」と決心。
そのプロジェクトでニーズのある専門知識を身につける事で(=深さの追求)
そこでの自分の存在が必要不可欠になり、
結果、自分の色をそのプロジェクトで出して行けるハズ。(=自己主張)

というワケでクリエイターとして生きていく前の修行の場として
まずはイベントプロデュース会社に就職。
しかもだいたい何でも何とかなっちゃうポジションを得た地元を離れ、
あえて知り合いもツテもない、仕事する上での国内最高レベルの地:東京へ上京。

そこの業務内容はまさに“いっちょかみ”。

イベント屋って何でもやんなきゃいけなくて、仕事を教えてくれた先輩にも
「ゼッタイに「できません」って言うな。とりあえず持ち帰って来い!」と
教えられました。

実際イベントだけにとどまらず、ソニー銀行の立ち上げプロジェクトから始まって
(ちなみに入社してスグの仕事がコレ。新人にまかせる内容じゃないよ…)
企画、屋外広告、映像制作、路上でのサンプリング、展示会…いろんな仕事ができて、
しかもひとつひとつのプロジェクトの全体を観る事ができる立ち位置だったので、
毎度スキルも知識もグングン上がっていく事が自分でもよくわかりました。
おかげで、自分ひとりで出来る「範囲」も広がり、「深さ」も得る事ができました。


その会社も3年で辞めて、独立して6年が経ちました。
(フリーランス×2年〜会社立ち上げて×4年)

初対面の方は僕の名刺をまじまじと見つめ、
「どのような事をされているんですか?」
と必ず質問されます。
(ワムハウス 代表取締役 / 演出家/映像作家/グラフィックデザイナー と書いてある。)

う〜ん、難しい。(そして説明がめんどくせぇ。)

相手と場合によって説明を変える事にしているのですが…

イベント業界の方には
「元イベント屋で今は演出をやってまして、それにまつわるクリエイティブも全部やります。
 企画から参加して、現場ではCUEも出すし、オペもやっちゃいます。」

それ以外の方には
「企画やコピーも考えますし、そこから実施に至るまで、また創りものなんかも全部やります。」
「映像やデザイン、音楽も創ります。写真も撮ります。店舗デザインなんかもやります。
 最近じゃ雑貨小物のブランドも始めまして、来年には自分でお店を創ります。」

…まぁつまり、何言われてもだいたい「出来ます」と答えます。
先輩に教わった事を今も忠実に守ってますよ→井出さん。

その「出来ます」具合が、本職の方々と比べられても遜色のないように、
『広〜く 深〜く』やっているつもりです。

おかげさまで最近は(いや、昔からか?)
“困った時やわからない時はとりあえず中村に訊いとけ”
的なポジションが確立できて、ワリと何でも屋さんになってきています。

そのようにお声がかかるという事は、ちゃんとやれているんだと自負しております。


自分の今のスキルが“100”だとして、
相談された内容が、そのスキルを少しオーバーする“120”だったとします。
コレが“200”とかで「できます!」って言っちゃうと、それはウソだったり
後で大変な事になっちゃったりするワケですが、
“+20”くらいのオーバーならハッタリで「できます!」って言っちゃって
コッソリ勉強して→“+20”追いついて、“120”をちゃんと実現させたその瞬間から、
その“120”は次の自分の“100”になる。
コレを地道に繰り返していけば、どんどんスキルは上がっていく。
…って話をよくします。

出来る範囲の仕事だけやってれば、失敗もないし、成長もない。

でもそんなのつまんないじゃん。

バレないように(相手に不安を与えないためにも、という意味で)コッソリ
ハッタリかまして、ちゃんと成果を上げて行けば、
相手もニッコリ。
僕もニッコリ。
コッソリ+ハッタリ=ニッコリ。(なんじゃこりゃ)


ねぇ、天国の片山先生。
僕、結局“いっちょかみ”のまま大人になりましたよ。
一流かどうかは自分ではよくわかりませんが、ちゃんとプロとしてやって行けてます。

今ならきっと先生は渋い顔せず、ちょっとニヤっとしながら、
でもやっぱり言うんだろうなぁ。

「おまえは“いっちょかみ”やなぁ」

今度は胸を張って、僕もニヤっと「…でしょ?」と答えたいです。
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by wamhouse | 2009-06-18 06:12 | 想 : column

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